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2009年11月12日 (木)

謎の怪書? 『すべてがFになる』 ミステリー推理作法 その2

また、来週と言いつつ、すぐにその2です。まあ、初回スペシャルの時間枠拡大ということで、お許しを。前々から、タイトルに書いたように、僕にとって、謎だらけの本 森博嗣氏が書いた本です。ミステリーは昔から好きだったのですが、他にも、SF、時代小説、マンガと好きな本がたくさんあったため、この本が発表された1996年あたりのミステリー界の動向は全く知りません。ぼくにとって、空白の10年と言っていいかも知れません。来週取り上げようと思って、Wikipediaで森氏の経歴を調べたら、ますますわからなくなってしまいました。第1回メフィスト大賞 受賞作だそうですが、この賞の重みがさっぱりわかりません。江戸川乱歩賞、サントリーミステリー大賞という僕にもわかる賞と比較してどのくらいのものなのでしょうか?ものすごく権威のある賞だったら、ごめんなさい。

理科系出身(確か、国立大工学部の 教授か助教授だったと思います)の本格密室ものの傑作という評価だそうです。本当は、ストーリーを話すと、ネタばらしで、ミステリー本の紹介ではタブーです。でも、それに触れないと、僕にとっての謎の意味が皆さんからわからないので、あえてします。もう、発表から13年経っています。ご容赦を。

まず、冒頭、ある国立大学の工学部の女子学生が、離れ小島の研究所で監禁されている女性にインタビューをします。この女子学生は、名門の出で、おじさんは県警幹部です。インタビューをうける女性も、日本を代表する資産家かつ学者一家の長女です。彼女自体、プログラミングの天才で、幼いころから世界中で活躍していました。残念ながら、14歳で両親を殺害しましたが、心身喪失、責任能力なしで無罪となり、今は治療を兼ねて、叔父が運営する研究所に監禁されつつ、プログラミングの仕事を続けています。アメリカに留学中の妹がいます。さて、ここまでが、基本的な人物紹介。

何ヶ月か経って、この女子学生が所属する研究室のゼミ旅行で、この島のキャンプ場を訪れます。引率する若き助教授が、この本の探偵役です。

夜、助教授と女子学生は、プログラミング研究所をアポなし訪問します。ちょうど、妹さんがアメリカから帰国するので、研究所長の叔父は、成田から飛んでくるヘリを迎えに屋上のヘリポートに行きます。いきなり、研究所の全システムがダウン。監禁されている犯人の女性の部屋のロックも解除されています。彼女が、逃げてしまう。あわてて一行は、彼女の部屋に向かいます。すると、彼女の部屋のドアが開いていました。でも、電動車いすで外に出てきた犯人の女性らしき死体があります。警備室の防犯カメラに残っていたカメラの映像には、電動車いすが出てきただけで、他の人物が出てきた形跡はありません。屋上では、叔父が殺され、妹は難を逃れます。犯人は一体誰?

ここから、謎ときが始まります。研究所のシステムのプログラミングは、14年前に、犯人の女性がしています。ちなみに、Fはプログラミングの世界では、数字の14です。犯人の女性の死体には、手が切断されていた指紋が照合できません。警備室のコンピューターだけは、独立していて、犯人の女性は一切関与していません。ここまでが、作家心得の情報開示です。

さすがに、今なら誰でも、トリックはすぐわかるでしょう。僕も去年読んだので、わかりました。犯人の女性が、14年後にシステムがダウンするようにプログラミングを細工していました。手を切断するトリックも、96年位がぎりぎり成立するものです。いまなら、DNA鑑定でわかってしまうから、無意味です。もちろん、ずっと後になって(探偵の謎とき)、犯人の女性の娘さんだとわかります。父親は、叔父です。僕がずっと、わからなかったのは、独立している警備室のシステムが管理する防犯カメラに、犯人の女性がどうやって手を加えたか?です。共犯者?しか考えらません。でも一番怪しい叔父は殺されています。そしたら、いきなり、実は独立していなかったことがわかります。はっきり言って、僕はアンフェアだと感じました。これなら、最初から繋がっていてもいいでしょう。あの当時だったら、最初のプログラミングへの細工で全部通るのですから。わざわざ、こんな小細工で、まじめな読者の時間を無駄に使わせるのはひどいです。

でも、この設定、致命的な欠陥があります。犯人の女性が最初の殺人(真犯人は叔父さんです。心神喪失状態の彼女にナイフを握らせたうえで、後ろから叔父さんが操っています)の犯した年齢です。14歳だから、普通の裁判の対象になります。でも、裁判までの過程で、ずっと叔父が経営する病院で治療を受けていて、警察関係はもちろん、中立な第3者の精神鑑定も受けてません。叔父としては、そんな鑑定を受ければ、自分が真犯人だとばれてしまうから、いろいろと権力者に手を回そうとするでしょう。でも、さすがに、ここまでの特別扱いは無理でしょう。法の前での平等。明らかに、憲法違反です。ミステリー作家の一大勢力に、弁護士出身がいます。その方々がクレームをつけなかったのでしょうか?選考委員の中からも、同様のクレームがあっていいはずです。

そうなのです。森氏は、どうしても密室の研究所に彼女を連れてきたかったのです。密室のための密室というか、いろいろ無理を重ねたわけです。まあ、当時としては、珍しい理科系出身が全体的には、高いレベルの作品と著者の将来性をかって、あえてクレームをつけなかったのでしょう。

ここからは、僕だけのミステリー作法です。本格ミステリーの犯人は簡単に人を殺してはいけません。ええい、面倒だ。殺してしまえでは、単なる粗暴犯。本格ミステリーの犯人が粗暴犯ではいただけません。こんな、面倒くさい殺人などおかさず、簡単に出てこれます。冒頭のシーンで、カメラ越しとは言え、女子学生の前に娘さんと登場し、真相を話すだけでOKです。研究所関係者の前に現れても、叔父が握りつぶしてしまうことはあり得ます。でも、女子学生は全くの第3者。しかも、名門のお嬢さんでおじさんが県警幹部。犯人の女性はもちろんそのことを全部知っています。まさか、口封じのために女子学生を殺してしまうことはできないでしょう。彼女が研究所に訪問できたのは、県警幹部のおじさんの強いプッシュの結果だったようですから。何も、プログラミング通り、14年間待ち続ける必要はありません。それでは、ロボットそのもので、天才の名に恥じます。近親相姦の非難から、叔父を守るという理屈も成り立ちません。犯人は、脱出後、すぐに殺してるわけですから。本人は、そんこと、恥だとも何だとも思っていません。天才ですから。確かに、昔はそんな例ざらですし、今の世でも、カーペンターズは、実の兄妹です。以上、ミステリ-作法、初回スペシャルその2でした。

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コメント

『天使のナイフ』読んでみます。
感想は、そうですね。
辛口ご免テーターのミステリー作法で取り上げてみますか。
ただし、僕の好みに合っていた時に限ります。

殺人の動機についてのhomisanのこだわり、
同感です。
人が、たくさん死んで、しかも楽しめると言ったら、
『犬神家の一族』などの金田一シリーズ化、
京極夏彦さんの『京極堂』シリーズくらいです。
どちらも、戦後すぐの話なので、
時代劇感覚で読めるので、あまり、
生々しさを感じないからでしょう。
もっと、好きなシリーズは、
『京極堂』のスピンオフ作品。
『薔薇十字探偵社』シリーズです。
人が、あまり死にませんから。

この本、私も読みました。
数学者の作品らしく、超難解。
ただ、殺人の動機が「?」で好きになれません。
「すべてがφになる」も読みましたが、謎解きに重点が置かれているのでしょうが、
「そんなんで人殺すか」というのが、正直な感想です。
なんで、この作品以降読んでいません。

人が人を殺すのには、「動機」が必要な派です。
なので、ミステリーでもそこの辺りの描写が旨い作品が好きです。

私の一番のお気に入りミステリーは
「天使のナイフ」薬丸岳
少年事件を扱った作品なので重いです。
心臓わしづかみ。
まあ、重すぎて好きじゃない人もいるでしょうが・・・。

この本、私も読んだよ。
ミステリーというのかなぁ・・・・。
森氏の作品は、他に「φは壊れたね」も読んだけど、命の重みが感じられない作品で、共感できません。
「人が人を殺すなら、その理由が必要」ていうのが私の主義。
なので、そのあと読んでません。

私のお薦めミステリーは「天使のナイフ」薬丸岳

この作品は、すごく重い。でも、その重さがミステリーには必要。
森博嗣さんの作品は軽すぎる・・・・。

古い場所にコメ書いてごめんなさいネ。

また来ます。

ぼくの単純ミスでした。すみません。
記事にする前に、もう一度確認すれば防げたケアレスミスです。つい、面倒で基本動作を省いてしまったことを反省。本当に、ご指摘ありがとうございました。

この本を読んでいないので
中にどう書かれていたかわかりませんが、
Fは15を表しますよ。。

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